司政官 全短編
■「司政官 全短編」 眉村 卓 (創元SF文庫)
1970年代~80年代の眉村SFの頂点ともいえる「司政官シリーズ」。その短編を全て集めた一冊です。文庫本なのに1500円(+税)というお値段だけど、眉村ファンなので思わず買ってしまいましたよ。
内容はこんな感じ。
「星々に進出した地球人類。だが連邦軍による植民惑星の当地が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構が新たに発足させらのが司政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた原住者種族を相手に単身挑む若き司政官たちの群像。」(カバー裏より)
収録7篇のうち、以前「司政官」というタイトルの短編集になっていた4篇は読んだことがあり、それ以外の「長い暁」「照り返しの丘」「扉のひらくとき」が今回初めて読む作品だった。とはいっても、旧版「司政官」が出ていたのは相当昔なので、あまり再読ということは気にしないで全作品とも新鮮に読めた気がする。
司政官シリーズは、SFなんだけどいわゆるドンパチ(アクション的なシーン)はきわめて少なく、ほとんどが主人公である司政官の心の内側を淡々と描きながら進んでいく。まずはそこが良い。眉村氏はジュヴィナルSFの名手でもあり、そのどことなく青くさい文体が司政官たちの理想論に向かって突っ走る(実年齢とは関係ない)若さむきだしのところに絶妙とシンクロしている。もちろん、自分のやっていることに対する懐疑、これでいいのかという悩み…も若さにはつきものの要素であり、司政官たちも大いに悩む。今回「司政官シリーズ」を読み直してみて、理想と体制の狭間で苦悩するインサイダーの心の内面というテーマは、やはり反体制運動が一段落し、日本社会が成熟していく70年代~80年代という時代を反映していたのだな…ということに改めて気づかされた。
また、個人的に好きなところは、未来社会や異星世界を描いてるのだけど、風景や文物、あるいは食事など生活に関連する描写を極力抑えてあるところだろうか。実際、ロボット官僚として多くのロボットが登場するのだけど、その形状などに関する記述はほとんどない。後期の作品になるほど、その傾向は徹底されていく。だからすっきりして読みやすいし、物語のテーマがより一層鮮明になってくるのである。
いずれにしても、これであと読んでないシリーズ作品は「引き潮のとき」だけになった。入手が難しそうだけど、機会があればぜひ読んでみたいものだ。
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