10秒の壁
■「10秒の壁 ―『人類最速』をめぐる百年の物語」 小川 勝 (集英社新書)
北京オリンピックも佳境を迎えてるわけですが、比較的珍しい陸上競技に関する本が目につきましたので、気になって読んでみました。
内容はこんな感じ。
「この1冊でオリンピックを見る目が変わる! 五輪の花形種目・陸上100m。10分の1秒、100分の1秒単位で勝負が決するこの種目は、過去、「数字」をめぐる幾多のドラマを生み出してきた。一読すればスポーツの見方が変わること間違いなし!」(Amazonの紹介文より)
とにかく「男子100メートル」という、たった1種目だけのために1冊まるごとを使った本。それだけに読み応えもあり、競技が成立した歴史から塗り替えられてきた記録の数々、そしてその記録を出してきた選手一人一人…などを詳しく紹介している。また、競技環境の変化(計時ルールやその技術の進歩、路面やシューズの発達、クラウチングスタートの発明…など)によって記録が向上してきた歴史も意外に最近のことなんだな…ということがよく分かる。さらに、「標高」や「追い風」が記録と非常に密接な関係があるということも初めて知った。「ただ走るだけ」のシンプルなスポーツ、しかし100分の1秒を競うこの種目のデリケートさがとてもよく分かり、興味深く一気に読めた。
著者は「記録はどこまで伸びるのか」という章で、現在最も注目すべき選手としてジャマイカのウサイン・ボルト選手をあげている。記録更新は平均ストライドを無理なく伸ばせる190cm以上の長身の選手でないと難しいと考えられるためである(ボルト選手は196cm)。
そのボルト選手が、北京では9秒69の世界新記録をマークした(8/16)。これまでの記録を一気に100分の5秒も縮める驚異的な記録ということになる。今までだったら「へえ~」で済ませていただろうが、本書を読んでいたおかげで、この記録のすごさを改めて実感できたような気がする。新聞記事によると決勝でのボルト選手は最後の数メートル、勝利を確信して「流していた」らしい。最後まで本気で走ったら記録はどこまで伸びていただろうか。しかし、本書には「世界新が出た時、最後の数メートルは流していた」ケースが意外と出てくる。これも記録の不思議さの一つである。
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