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2008年10月30日 (木)

猛き箱舟

■「猛き箱舟」(上・下) 船戸与一 (集英社)

「買ったものの読んでなかった本」を読むシリーズ。これは年季入ってますよ。1987年の初版本(単行本)。実に20年以上、機が熟すのをじっと待っていた…そんな一冊です。

物語はこんな感じ。
「あの『灰色熊』のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた香坂の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。その仕事は、砂漠の小さな鉱山を敵の攻撃から守ることだった…。人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。」(「BOOK」データベースより)

1980年代後半…というのは、国産冒険小説というジャンルが一気に花開いた時期でした。当時お気に入りだったのは、志水辰夫、佐々木譲、高村薫、大沢在昌、森詠、そして船戸与一などなど。でも、あれもこれもと買いすぎて、なんとなく読むタイミングを逃してしまった作品が何冊か本棚に残ってしまっていた。これはそんな一冊ということになる。
今回、たまたま目について読んでみたんだけど、やはり油の乗り切った時期の船戸作品だけに、実に濃厚な味わいたっぷり。西サハラの灼熱の砂漠、アルジェのカスバ、そして東京…といった世界各地を舞台にダイナミック、かつエネルギッシュな物語が一気呵成に展開する。この船戸与一のスケールのデカさは、仮に映画化するとしてもハリウッド以外では絶対に無理だろうと思う。上下2冊、2000枚というボリューム感も含めて、久々に船戸ワールドを堪能することができた。
という感じなんだけど、読み終えて思ったのは、全体の構成が、後に彼が書く大作「蝦夷地別件」に似てないか、ということだった。とりわけ、熾烈な戦いが若者の人間性を大きく変え、最終的には圧倒的な復讐鬼に変貌させる…という部分はそっくりではないか。「蝦夷地別件」は、この「猛き箱舟」の構成をもとに、より作品としての格調、完成度などを高めたものといっても良いような気がした。
ちなみに、「蝦夷地別件」については、最後の復讐譚の部分はあまりにも陰惨で要らないのではないか…という書評も目にしたことがある。たしかに私も読後、暗い印象が残ってしまう結末についてはややとまどったものだ。しかし、船戸氏が以前からこの復讐というモチーフにこだわってきたのだとしたら、やはり「蝦夷地…」についてもそれを含めてもう一度読み直してみる意味があるのではないか、という気もした。

買って20年以上も放置していた本作だけど、やはり読んでみるといろいろな発見があるものですよ。というわけで、この「積ん読」本復活シリーズ、さらに続きます。(^v^)

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