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2008年11月23日 (日)

パレオマニア

■「パレオマニア ―大英博物館からの13の旅」 池澤夏樹 (集英社文庫)

池澤夏樹氏の本はけっこう読んでいて好きな作家の一人です。本作は2004年に単行本で出ていた作品が文庫化されたのをきっかけに読んでみました。

内容はこんな感じ。
「古代妄想狂(パレオマニア)を自称する男が大英博物館で気に入った収蔵品を選び、それが作られた土地を訪ねる。ギリシアの神殿へ、エジプトの遺跡へ、インドの仏塔彫刻の街へ。知的興奮と豊かな感動に満ちた13の旅。」(Amazonの紹介文から)

個人的に好きなジャンルである「紀行」と「歴史」。その2つの要素が同時に入っているというところがまずおもしろく、一気に読んでしまった。
旅は、ギリシャを皮切りに、エジプト、インド、イラン、カナダ、イギリス、カンボジア、ベトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリア…と巡っていく。最後はロンドンの大英博物館に帰ってくる。
それらの旅で特に印象深く読めたのは、カナダ(ネイティブアメリカン)、イギリス(ケルト)、オーストラリア(アボリジニ)…などの章であった。これらの旅に共通しているのは、あまり形になるものを残していない文明(文化?)に出会う旅だったことだ。本書でも指摘されているが、ギリシャやエジプト…など巨大な遺跡を残している文明は、現在の私たちの住む世界(現代日本も含む)に直結しており、意外性はあまりないともいえる。しかし、それらとタイプ(生き方)の異なる文明、高い精神性を持ちながら巨大な建造物を残さなかったネイティブアメリカンやアボリジニ…などの歴史を訪ねると、「文明とは何か」「人間とは何か」という問いの答が見えてくるのではないだろうか。このあたりは普段ほとんど意識したことのない指摘だったので、とても新鮮に感じられた。
逆に、ギリシャやエジプトをはじめとする現代文明につながる遺構を辿ると、「何千年前も今も人間がやってることは同じではないか…」ということが分かってきたりもするから、こっちはこっちでおもしろいんだけどね。たしかに昔は工業製品やITなどはなかった。しかし、穀物を栽培し、魚や肉を食べて暮らしていたという基本的な日常生活は(その食物の調理法さえ)数千年間でたいして変わってなかったりするのだ。たしかにそうかもしれないと思わせられた。
本書は、著者が実際に世界各地を旅して書かれた作品なのだが、作品中の人称は「私」ではなく「男」(三人称)となっている。そのため、人間というよりは抽象化された「精神」が旅をしているような感覚がある。古代の遺物が作られた土地を求め、最終的には「文明とは何か」というようなことを考える旅の雰囲気にとてもよくマッチしていると思った。

ところで、こういう旅は私のように語学が不自由な一般人にはまず無理。そういう意味でも本書の価値は大きいのではないだろうか。

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