東京都ガラパゴス
■「東京都ガラパゴス 小笠原をゆく」 飯田辰彦 (NTT出版)
初版は1996年。当時、小笠原諸島に旅行してみたいという思いがあって資料用に買った一冊ですが、結局、現在に至るまでその計画は実現しておりません。(^v^;;
内容はこんな感じ。
「アフリカやアマゾンの密林に比べれば砂粒ほどでしかない小笠原のジャングル。そこに辛うじて息づく亜熱帯の生物の数々と島々そのものの魅力を、自然誌と島をめぐる人々の歴史の両面から探る。亜熱帯の森からのメッセージ。」(「MARC」データベースより)
父島、母島を中心とする小笠原諸島には、航空機の路線がない。そのため、小笠原への旅は約1000キロの海路を船で行くことになる。所要時間は約一昼夜。現在、航空機を使えば、北海道だろうが沖縄だろうが、国内ならほぼどこでもその日のうちに到達できるわけだが、それができないのが東京都に所属する小笠原諸島なのだ。つまり、言い方を変えれば、日本で一番の秘境は東京都にある…ということにもなる。
しかも、小笠原は絶海の孤島であるがゆえに多くの固有種の動植物が生息し、その自然の豊かさは有名なガラパゴス諸島にも比肩するのだという(タイトルはそのことにちなんでいる)。本書は、刊行時点で「小笠原諸島通い歴10年」という著者が、そんな小笠原への熱い思いを込めた紀行エッセイである。
最初、本書を買った時には、「小笠原全体のガイドブック的な本だろうな」という勝手な思い込みで読み始めたのだけど、結論的にいうと、そういう役割を期待して読むとちょっとアテがはずれるのではないだろうか。まず、小笠原で誰もが連想するのは「海」だろう。島なんだから当然だと思うのだが、本書には海についての記述はほとんど出てこない。中心になっているのは、小笠原諸島の大部分を占める「山」、とりわけそこに繁茂する「植物」についてである。
たしかに、非常に詳しく書かれているし、孤島ならではの植物相のことや人間が持ち込んだ外来種のために小笠原固有の種が圧迫されている…という話などはあまり知らないことだったので、興味深く読めたのだけど、「小笠原全体のことが知りたい」と思った読者には、やや物足りなく思えるかもしれない。
特に、「ガラパゴス」というタイトルからは、有名なイグアナやゾウガメ、ダーウィンが進化論を提唱するきっかけとなったフィンチ(鳥)…などを誰もが思い浮かべるだろうから、「植物中心ってのはないんじゃないの…」というのが素直な感想だった。
もっとも、植物以外のことがまったく書かれてないわけではない。植物関係が7割、その他が3割…くらいの割合で、動物や鳥類、島の歴史、住民や産業のことなどにもページが割かれている。個人的にはこの部分がいちばんおもしろく読めた。特に後半の歴史の部分は、知らなかったことも多く書かれていて興味深かった。
総合ガイド的な本は別に用意して、小笠原をより深く知るための補助的な一冊として読むのがいいのではないだろうか。何はともあれ秘境・小笠原、一度は行ってみたいと今でも時折思っている。
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