ボックス!
■映画「ボックス!」新宿バルト9
予備知識としてあったのは、「市原隼人主演のボクシング映画」ということくらい。平日の夕方からの回を見たので、やはり女子高生のお客さんが多かったですね。
ストーリーはこんな感じ。
「高校の体育科でボクシング部所属の鏑矢(市原隼人)は、ボクサーとしての天性の素質を持っていた。一方、幼なじみで特進科の秀才、木樽(高良健吾)は子どものころから腕力にはまったく自信がない。ある日、木樽は自分も鏑矢のように強くなりたいと願い、ボクシング部に入部する。日々コツコツと努力を積み重ねていった木樽は…。」(シネマトゥデイ)
大阪という街には本当にボクシングが似合う。大阪を舞台にしたボクシング映画…というところからして、すでにコッテコテの映画なのである。そして、物語もある意味でベタベタだ。スポ根もの、青春もの、友情ものにありそうな要素がテンコ盛り。しかし…それでいながら文句なしにおもしろい!
ボクシングのリズムさながらに、非常にテンポのいい映画。冒頭の3分見ただけであっという間に物語の世界に引き込まれてしまう。市原隼人演じる鏑矢(カブちゃん)のやんちゃでいながら憎めない愛らしさがまず魅力的。対する幼なじみの木樽(ユウちゃん)は引込み思案の優等生という設定だけど暗さはなく爽やかだ。対照的な2人を中心にストーリーはどんどん進展していく。エキサイティングな試合のシーン、そして登場人物たちのさまざまな思いが交錯するそれ以外のシーン。動と静のコントラストが生み出す物語のダイナミズムがとにかく心地よい。さらにシリアスなシーンの合い間にはいかにも大阪らしい笑えてしまうような細かいクスグリが随所にちりばめられ、画面からは何ともいえないエネルギーが伝わってくる。ラストシーンまで一気呵成に見せられてしまった。
この映画は高校のボクシング部が舞台なので、一種の習い事映画でもある。しかし、近年量産されている習い事映画の多くが、「珍しい題材+素人が強くなる(上手くなる)話」であるのに対して、本作の特色は、「ボクシングという王道の題材+強い者がより強くなる話」であることだろう。たしかに木樽は素人からボクシングを始める設定なので、この部分は普通の習い事映画っぽい。しかし、話の本筋はあくまでも主役の鏑矢が「より強くなる」話だ。
鏑矢は、もともとの素質だけですでに十分に強い。しかし、全国レベル、プロレベルの選手になるためには、やはり才能だけでは無理。鏑矢の前には高校チャンピオンの稲村という強力なライバルが立ちはだかり、彼は人生初の敗北を味わうことになる。どん底から立ち直ろうとする鏑矢。ここまでならよくある話だ。しかし、この映画はそこからさらに第2段ロケットに点火する。今度は急成長した木樽までもが鏑矢のライバルとなっていくのである。まさにライバル物語と友情物語の絶妙のハイブリッド。葛藤する鏑矢の心情が痛いほど伝わってくる。しかし、その苦しみこそが鏑矢をより大きく成長させるために必要なものだったのだ…。
そう、本来のスポ根というのは「巨人の星」にしても「あしたのジョー」にしても、もともと相当に強い選手がさらに強くなるために試練を乗りこえる姿を描くというものではなかったのだろうか。本作は、現代人にとっても親しみやすい素人の成長物語と組み合わせることで、本来の熱いスポ根をよみがえらせている作品なのかもしれない。
見た後で気づいたのだけど、演出は「デトロイト・メタル・シティ」の李闘士男監督。「DMC」もかなり好きな映画だけど、おもしろさと痛快さでは本作の方が上回ってる気がする。試合での1ラウンド3分間ワンカットの長回しも迫力十分だったし、中心人物2人以外ではコーチ役の筧利夫がいい味を出している。
(「ロッキー」「どついたるねん」もそうだけどボクシングってトレーニングシーンも実に絵になる)

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