カノン
■「カノン」 篠田節子(文春文庫)
再読もの。本棚を片づけててふと目について。
ストーリーはこんな感じ。
「学生時代の恋人が自殺する瞬間まで弾いていたバッハのカノン。そのテープを手にした夜から、音楽教師・瑞穂の周りで奇怪な事件がくり返し起こり、日常生活が軋み始める。失われた二十年の歳月を超えて託された彼の死のメッセージとは? 幻の旋律は瑞穂を何処へ導くのか。『音』が紡ぎ出す異色ホラー長篇。」(「BOOK」データベースより)
10年ぐらい前に読んで、かなり印象に残っていた作品…のはずだった。ところが、カバーに書かれている「あらすじ」が、なんとなく記憶にあるのと違っていた。「こんな話だったっけ?」と思って、最初の数ページを読んでみたのだけど、どうもしっくりこない。そのまま読んでいるうちに、普通に最後まで読み通してしまったのだった。
結論からいえば、「かなり印象に残っていた」はずのあらすじは、実は同じ作者で、さらに題材も音楽ものということで似ている「ハルモニア」という作品のものだったようだ。以前に読んだ時期も近かったせいで、記憶の中で完全に混同していたっぽい。
逆に、本作については、初読の時にあまり印象に残っていなかったせいか、今回かなり新鮮に読めてしまった。紹介文に「ホラー長編」とあるけど、そんなに怖さはない。唯一、ホラー小説らしいところといえば、友人が死に際に残した演奏のテープが何度捨てても、身近の新しいテープにいつのまにかダビングされて復活してきてしまう…というところぐらいだろうか。しかも、その友人というのが20年前に淡い恋愛関係にあった相手なので、怖いというよりもホロ苦い青春の記憶や切なさの方がより強調されているしね…。
つまりは、20年の歳月を経た恋愛小説、または青春小説的なテイストの方が濃い作品…というのが、改めて読んでの感想だった。「ハルモニア」のあらすじの記憶にあったような「鮮烈さ」はないものの、これはこれでじっくり読める大人の小説という感じである。
作品の中では、バッハの楽曲、特にカノンが重要なアイテムとして登場する。主人公が仲間たちと一緒にそのバッハに取り組む夏の山荘の回想シーンこそが、この作品の核心となる場面なのだが、実はその影響もあってか、当時「バッハのチェロ演奏集」のCDを買って持っているはずだ(主人公の担当パートはチェロ)。ちょっと探し出して聴いてみようかな…などと考えている。
ちなみに、この流れだと近いうちに「ハルモニア」も再読する必要がありそうですね。
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