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2011年4月24日 (日)

まほろ駅前多田便利軒

■映画「まほろ駅前多田便利軒」錦糸町楽天地シネマ

前日に同じ劇場で「エンジェルウォーズ」を見て、「明日からか…」ということで。ちなみにタイトルの「多田」は、「おおた」ではなく「ただ」と発音します。見る前は普通に「おおた」だと思っていた自分…。

ストーリーはこんな感じ。
「ある年の正月。東京郊外に位置するまほろ市で便利屋を営む多田(瑛太)のもとに、ひょんなことから中学時代の同級生の行天(松田龍平)が転がり込んでくる。自称コロンビア人の娼婦ルル(片岡礼子)やヤバいアルバイトに手を出す小学生の由良(横山幸汰)など、二人は便利屋稼業を通して奇妙な客たちの人生に深くかかわっていく。」(シネマトゥデイ)

原作は、直木賞を受賞した三浦しおんの小説だけど未読。「まほろ市」は「町田市」をイメージした架空の街らしい。映画の冒頭で、そのまほろ市の風土性がモノローグで語られる。非常に強い地元志向があるのだという。つまり、まほろ市もまた千葉や埼玉のような「ヤンキー文化圏」に属しているということだろうか。
ヤンキーといえば、地元志向とともに欠かせないのが「家族志向」だろう。そういう意味では、この物語の通奏低音になっているのは、明らかに「子供」であり「家族」である。主人公の多田には、幼い子供を亡くした過去がある。このことは物語後半で明らかにされるが、始まってすぐにもお地蔵様のようなお墓に参ってるカットがあるので、見ている者にはほぼ予想できるようになっている。相棒役の行天は、子供はいるが会ったことはないという。そのくせ金もないのに小額の仕送りを続けていたりする。2人とも、世間一般から見れば得体のしれない浮草暮らしのような生活だが、そうなる大きなきっかけは、どちらも「子供」だったという共通点が徐々に分かってくる。
つまり、地元志向・家族志向の強いまほろ市では、2人は当たり前に持ってなくてはならないものを失った欠落者なのである。だから、自分に欠けたものを補おうとするかのように、雇い主とその子供にコミットしていくことになる。夜逃げした女性に犬を届けに行ったのも、その犬が女性の子供が飼っていたものだと知ったからだろうし、親に愛されないストレスから麻薬かなにかの運び屋をやっている小学生を救うためにヤクザと対決したりもする。
しかし、考えてみれば地元に根づき、家族や子供を大事にするというのは、何もまほろ市に限ったことではないだろう。いわば日本の縮図である。その日本で、まともな会社勤めもせず、家族も持たない者がどう生きていけるのか、つまり「やりなおせるのか」というのがこの物語のテーマなんだろうと思った。もちろん答えは何も出ていない。それぞれの痛みや苦い過去を抱えて、その日を生きていくしかない。
物語の最後で、一度は「出て行ってくれ」と言った行天に再会した時、主人公は何の迷いもなく彼を迎え入れる。出て行ってくれと言ったのは、行天の痛みと自分の痛みが似すぎていたから、だから彼を見ていることに耐えられなくなった。しかし、時間をおくことでお互いこそが最大の理解者になれる可能性に気づいた…ということなのかもしれない。家族や子供がテーマの映画というと、それがあることのありがたみを描いてるものが多いけど、「ない」という立場からの作品はけっこう珍しいんじゃないだろうか。
全体的にはそんな感じだと思ったんだけど、映画としては分かりやすい作風ではない気がした。見ていて退屈とか難解ということではなく、テーマ性をあからさまに表面に出してないからだ。見終わってもう一度よく考えてみないと、「何が言いたかったんだろう」という感じで流されていってしまう作品かもしれない。
ちなみに、脇役で出演してる大森南朋、麿赤兒の両氏は、大森立嗣監督のそれぞれ弟、父に当たる。つまり、家族3人でこの映画に関わってるわけで、「家族」がテーマの映画らしい。
主演の瑛太、松田龍平は2人とも良かったけど、松田龍平が一貫して飄々とした行天なのに対して、瑛太の主人公のキャラはクールなのか熱いのか、今一つわかりにくいところがあった。2人の演技合戦は松田龍平に軍配かな。

(近年の映画には珍しく喫煙シーンの連続。原作の設定なんでしょうね)
Maho

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