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2016年8月

2016年8月31日 (水)

時をかける少女 【角川映画祭】

■映画「時をかける少女」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」8本目。1983年の原田知世主演第一作。公開時に何度も見ただけでなく、自宅にビデオソフトがあるので、今でも何年かに一回はリピートするくらい好きな作品。ただ、このチャンスを逃すともうスクリーンで見る機会はないかも…ということで。

ストーリーはこんな感じ。
「高校生の芳山和子はある日、同じ情景を何度も体験していることに気づく。彼女はタイムトラベラーになってしまったのだ。やがてその能力は、かつて理科実験室でかいだラベンダーの香りに秘密があることが判明するが…。」(allcinema ONLINE)

もはやあれこれ語る必要のない名作。SFジュヴィナイルという題材と大林宣彦監督ならではの映像美学、そして尾道というロケーションと原田知世の魅力…すべてが最高の組み合わせとなった。30年以上たつのにまったくといっていいほど古びてないと感じるのは、もともと時代性の薄い作品だったからでもあるのだろう。1983年の公開時から、すでにノスタルジックな作風だったのだ。

改めて見直してみると、この物語は大部分は、ほんの短い期間の出来事でしかないことがわかる。オープニングのスキー教室は春休みの行事であり、肝心の「時をかける」エピソードは新学期が始まったばかりの4月18日を中心とする土曜日から火曜日…わずか4日ほどの間に起こっている。
さらにいうなら、「時をかける」とあるが、主人公の少女は自らの意思でタームリープしたり、そこで何かの冒険をしたとか戦ったとかいう話でもない。単に「同じ月曜を2回経験してしまった」というだけなのだ。タイムパラドックスも出てこないし、タイムリープによって何らかの不都合が起きたわけでもない。
でも、この「話の小ささ」が非常にいいのだなと感じる。タイムリープによって彼女が感じる「自分が自分でなくなったような感じ」は、誰もが思春期に覚える微熱感を象徴している。そんな時に経験したほんの小さな、でも印象的な出来事によって、その後の一生が変わってしまう…ということも珍しくないことかもしれない。タイムリープという、現実には誰も経験してない出来事を題材にしながら、これだけ多くの人の心に残る作品になった理由は、間違いなくそのあたりなのだろう。

あと、やっぱり音楽の使い方。エンドロールの主題歌もだけど、松任谷正隆の劇伴がとにかく素晴らしい。劇中で主人公たちが歌う「愛のためいき」もいいね。温室でデュエットするシーンが印象に残るが、そのメロディー(作曲は大林監督自身!)は後に劇伴として変奏される。この夜道を並んで歩くシーンもとてもよい。深町家の前で別れる時、一日目はかわいく手を振って去っていくのだけど、二日目は振り向かずに肩を落として帰っていく知世も…。こういう細かいことを言い出したらキリがない映画でもある。

ちなみにこの深町家のロケ地。映画公開から15年後くらいにロケ地巡りで行ったことがある。私有地ということで近くまでは行けなかったのだが、雰囲気は感じられた。他にはタイル小路なんかも行ったね。

現代の目で見ると…やはり、教室で原田知世の後ろの席に座っている女優さんが、どうしても「たんぽぽの白鳥久美子」に見えてしまうという現象が。ネットでは「本当の『時をかける少女』は白鳥だった!」とか書かれてたが、見れば見るほど似てる…。

(高柳良一の棒読み演技もこの作品に関してはこれしかない!という感じ)
Toki

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2016年8月30日 (火)

脱脱脱脱17 / 電気100% 【MOOSIC LAB 2016】

■映画「脱脱脱脱17」 新宿 K's cinema

「音楽×映画の祭典=MOOSIC LAB(ムージックラボ)2016」。この日は「プログラムA」の最終上映。チケットソールドアウト。大人気でしたね。the peggiesのゆうほさんが主演…ということで見てきました(音楽もthe peggies)。

アウトラインはこんな感じ。
「34歳の高校生ノブオと、嘘泣きが得意なリカコ。もがく彼らは果たして永遠の17歳を卒業する事が出来るのか? 撮影当時高3の松本花奈がthe peggiesのロックナンバーに乗せておくる渾身の青春映画! ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2冠を獲得した話題作!」(MOOSIC LAB 紹介文より)

監督・脚本・編集の松本花奈さんは撮影当時17歳の高校生(現在は大学1年で18歳)。終映後の舞台挨拶ではスタッフもほとんど10代だったという話をしていた。まず、その若さでこれだけの長編映画を大きな破たんなく作り上げていることに感心させられる。この日上映された「MOOSIC LAB版」は80分だが、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映された完全版は2時間近くあったそう。

作品全体の仕上がりも、インディーズ映画らしい多少粗削りなところはあるものの、自主映画にありがちな独りよがりな難解さなどはなく、すっきりまとまっている。タイトルは「ダダダダ・セブンティーン」と読む。ぱっと見ると「何のこっちゃ?」って感じだけど、ストーリーを追っていくうちに、登場人物たちを縛っていたそれぞれの過去に決着をつけようとする「脱」なのだということがすとんと腑に落ちる。青いといえばいえる。しかし、それは若さにはつきものの青さでもある。いや、もうとっくに若くなくなっている私たちも、心のどこかに捨てきれない過去の痛みを抱えていることは少なからずある。不格好ではあるが、しっかりとトラウマに向き合おうとする彼らが爽やかであり、眩しくも感じられた。

リカコ役は北澤ゆうほさん。作中でもギターを弾きながらthe peggiesの曲を歌う。特にバンドをやっている設定ではないので、最初は「普通の人にしてはうますぎる…」とも感じるのだけど、徐々に慣れていく。主演女優としての演技が云々…というより、ミュージシャンならではの存在感で見せる役づくりだったかな。味はあったと思う。しかも、セーラー服にスクール水着、さらにはストリップまで(全部は脱がないけど…)、ほぼ全編サービスシーンでもある。ファンならこの貴重な映像、見逃すわけにはいくまい!

終映後の舞台挨拶は、松本監督+ノブオ役の鈴木理学氏、実習生役の鈴木筑詩さんの3人が登壇。興味深い制作裏話など。作中、場末のストリップ劇場がかなり大きな舞台となる。タイトルが「脱」なので、「脱ぐ→ストリップ」というイメージから考えたそう。もちろん音楽にあわせて踊り子さんが脱いでいくシーンもばっちりある。それをさらっと演出してしまうのだから、女子高生でも映画監督をやろうという人はやはり腹が据わっているのであろう。

(撮影も全体にきれいで見やすかったです)
Dada


■映画「電気100%」(「プログラムA」として同時上映)

「奇才クリエイター・幸洋子がトラックメイカー・食品まつりとコラボレーション! タイと日本を繋ぐ実写×アニメーション×ドキュメンタリー×フィクションとあらゆる素材を使った異色作品!?」(MOOSIC LAB 紹介文より)

20分の短編。男女が混浴の(?)銭湯につかりながら世間話してるような音声をバックに、極彩色のイラストやタイの写真などがゆったりと映し出されていく。見てるうちにしだいにトリップしていくような感覚。ドラッギーといえばいのか。この夏に行った「瀬戸内国際芸術祭」の展示物の一つだったとしても何の違和感もないだろう。現代アートっぽい。けっこう好きかも。

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2016年8月28日 (日)

Doll☆Elements @錦糸町タワーレコード(8/28)

■本館に追加したライブレポート

8/28 Doll☆Elements 錦糸町 タワーレコード(インストア)

9/14リリース予定の9thシングル「エクレア ~love is like a sweets~」の予約イベント。日曜正午からだったけどお客さん多かったね。ギリギリの会場着だったので、ほぼ最後列から。でも、ここはステージが高いので、まあまあ見えた感じだったかな。新しい衣装も夏っぽくてかわいかったよ(9月リリースの曲ではあるんだけど…)。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2016年8月27日 (土)

復活の日 【角川映画祭】

■映画「復活の日」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」7本目は1980年公開の本作。これ、原作を映画化以前に読んでいて、どういう話かは知ってるから…という理由で見逃してた作品。この機会にぜひ…ということで。

ストーリーはこんな感じ。
「1982年、東ドイツの研究所から猛毒のウイルスMM-88が盗まれた。ところが盗み出したスパイの乗った飛行機はアルプス山中で事故に遭い、ウイルスの蔓延によって、人類は南極にわずかな生存者を残して滅亡する。生き残った一人、地震研究者・吉住は、さらに大きな危険が近づいていることに気づく。アメリカ東部の大地震によって、核ミサイルが自動発射されるかもしれないのだ…。」(allcinema ONLINE)

中川右介氏の『角川映画 1976-1986』によれば、そもそも角川春樹が映画製作に乗り出すきっかけになったのが、この「復活の日」を映画化したいという思いだったのだという。人類がウイルスによって滅亡する…という、とにかくスケールの大きいストーリー。それを大胆に映画化した本作は、まさに「ザ・角川映画」というにふさわしい超大作だ。主人公はいちおう日本人だが、外国人俳優が英語で演技している場面の方がはるかに多い。改めて見ても、よくこんな映画を作ったなという気がする。

原作は、前半が人類滅亡までのパンデミック(疫病の大流行)の話であり、後半は南極で生き残った人々の奮闘を描くものとなっている。かなりの長編だが、映画は時間の関係もあって、どちらかというと後半に比重を置いたものになっている。そのため、人類を約1時間で滅ぼしてしまわなくてはならない。たしかにやや駆け足という気もしたけど、原作にこだわらなければ、これはこれでありなのかもしれない。逆にスピード感があって一気に見ることができるともいえる。

小松左京の原作は1960年代に書かれているので、「冷戦の緊張感」や「核戦争の恐怖」という当時の国際情勢が色濃く反映されている。たしかに、現代にも北朝鮮の核兵器やミサイルといった危機は現実としてあるが、もし米ソが核戦争に突入したら…という当時の不安とはケタが違うといわなくてはならない。映画化された1980年前後になると、もうその感覚は相当弱まっていたわけだが、それでも映画は原作のその気分を引き継いだストーリーになっている。今見ると、時代感覚の移り変わりというものを感じさせられる部分だ。

時代感覚といえば、後半の南極における「女性の扱い」にも、原作の書かれた当時と現代との違いを感じる。物語では、南極で生き残った人類約800人のうち女性が「8人」しかいないことが問題となる。人類が存続するためには、この8人の女性に、可能な限り多くの子供を産んでもらわなくてはならない。しかも、「種としての多様性」を担保するには、できるだけ父親が違う子供を残した方がいいだろう。ここまででも、女性には大変な肉体的・精神的負担を強いることになる。さらに、物語ではそれだけにとどまらず、大勢いる男性の「性処理」もこの8人の女性にお願いできないか…という流れになっていく。

このあたりは、「人権」や「個人の尊厳」という価値観がより重視されるようになった現代の感覚からすると、「それでいいのか?」という気にもなる話である。性処理云々については、男どもは自分でオナニーでもやってろ…でいいが、子供をたくさん産まなくてはいけないというだけでも、やはり女性の負担は大きい。つまり、「復活の日」の後半を現代的に読み解いていくと、「人類の存続」は、個人の人権や尊厳以上に重視されなくてはならないものなのか?…という、非常にSF的であり、同時に哲学的、文学的、宗教的な問いが発生してくるのではないだろうか。

もちろん、そんな理屈っぽい話は抜きにしても、壮大なスケールで楽しめる「本格派ディザスター映画」なのは間違いない。原作者・小松左京が、自作の映画化作品の中では「復活の日」をいちばん気に入っていたというエピソードがWikipediaに書かれている。こういう映画は原作との落差でがっかりさせられることも多いのだが、たしかに本作でそれはなかった。今更だけど見ることができてよかったと思った。

(まだ20代の草刈正雄はイケメン青年…)
Vi

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2016年8月23日 (火)

Wの悲劇 【角川映画祭】

■映画「Wの悲劇」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」6本目。1984年公開の本作は薬師丸ひろ子が角川映画に出演した最後の作品。これもスクリーンで見るのは30年以上ぶり…ということで、とても新鮮でしたね。日曜のアサイチ上映(10時30分スタート)でしたが、お客さんも多かったです。

ストーリーはこんな感じ。
「三田静香は、女優を目指す劇団“海”の研究生。次回公演の『Wの悲劇』の主役を研究生の中からオーディションで選ぶことになり張り切っていたが、静香についたのは結局セリフ一言の小さな役。が、大阪公演の幕が開けたその夜、静香は劇団の看板女優・羽鳥翔の部屋で彼女のパトロン・堂原良造が死んでいる現場を目撃してしまう…。」(allcinema ONLINE)

改めて見ても素晴らしかった。何度も見ていて、ストーリーだけでなく主なセリフやカット割などもほとんどわかっているのに、それでもスクリーンを見つめながらぐっとこみあげてくるものを必死で抑えないといけないシーンがいくつもあった。いや~、また見られて良かった…。

公開された年の「キネ旬」日本映画ベストテンでは2位(1位は「お葬式」)。読者選出の方も2位なので(1位は「風の谷のナウシカ」)、評論家と読者の平均点をとれば、この年、最高の評価を得た作品といってもいいだろう。まぎれもない傑作であり、ここがいい、あそこがいい…というのももう語りつくされてる感じだけど、今回久しぶりに見て思ったことなどをいくつか。

この映画の最大の成功理由は、原作小説を「劇中劇」にしてしまい、それが入れ子構造になるようなオリジナルのストーリーを新たにつくりあげたこと。素晴らしい脚色、脚本であり、さらに、結末の急転直下ぶりもなかなかのものだ。ラストシーンの直前、アパートを引き払う薬師丸ひろ子が、天井にはがし忘れた「Wの悲劇」のポスターをみつけて跳びつく…というシーンがある。初見の時は何の意味があるのかわからなかったのだが、その後「もうあの大きい舞台には手が届かなくなった主人公の境遇」を表しているのだと気づいた。おそらく劇団も辞めたのだろう。刺傷事件の後にあったであろう、さまざまな出来事をいちいち(セリフなどで)説明せず、この一場面にすべてを象徴させている。最後までスマートなのだった。

共演陣では三田佳子が圧倒的。実際に助演女優賞などを総なめにしたのだが、もう一人の重要人物、世良公則もけっこう良かったと思っている。ちょっと暑苦しいんだけど、でも人柄は良さそうで憎めない…そんな人物像にどんぴしゃだった。ちなみに、この時期の彼のもう一本の代表作は映画「ザ・オーディション」だろう。こちらは、作品的にはB級扱いだが、彼が主演だったから成立した映画でもある。今となってはほとんど見る手段がないのが惜しい。

音楽は久石譲が担当している。この時にはまだ同年公開の「風の谷のナウシカ」一本しか手がけてなかったそうだ。本作の劇伴にも、後の「天空の城ラピュタ」など宮崎映画の数々に通じるようなフレージングが感じられたりして興味深い。音楽では、劇中劇で使われるサティも非常によく効いている。

薬師丸ひろ子の前作、前々作(「メイン・テーマ」「探偵物語」)などに比べると、80年代という時代性を感じさせる部分が少ない作品でもある。劇団研究生が居酒屋に集まっているシーンや風呂なしアパートに住む若者たちの暮らしぶりなどは、むしろ70年代的といってもいいほど。しかし、クロスオーバー風の音楽にあわせたダンスレッスンの場面などは、やはり80年代っぽさを出そうとしてるのだろうか…と思ったり。あまり、いつ頃の話ということは考えないで見ればいいのかもしれない。

本作は、「薬師丸ひろ子をアイドルから女優にした」映画だが、アイドル映画らしいサービスシーンもある。それが銭湯に併設されたコインランドリーの場面。湯上りになぜか紺地の浴衣を着ているのだ。ストーリー上は、浴衣の必然性は何もない。世良公則が「浴衣、似合ってるね」と言うのだけど、本当によく似合っててかわいい。貧乏研究生の役で、オシャレな服を着る場面などがほとんどないので、唯一このシーンをつくったのだろうか。

未来に不安を持ちながらも夢を追う若者の物語であり、拍手やスポットライトの魔力にとりつかれた人たちの話でもある。もちろんアイドル映画としてもきちんと成立している。薬師丸ひろ子主演作の中でも文句なしにナンバーワンだろう。

(有名なこのシーンだけでなく見せ場、名場面、名ゼリフのオンパレードです)
Wno

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2016年8月21日 (日)

探偵物語 【角川映画祭】

■映画「探偵物語」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」5本目は1983年公開の本作。主演は薬師丸ひろ子で、相手役に松田優作。劇場で見るのはたぶん33年ぶりかな。その後、テレビ放映された際に一部分だけ見たことなどはあったけど、最初からきっちり見るのは本当に久しぶりでしたね。

ストーリーはこんな感じ。
「父が待つアメリカへの出発を一週間後に控えた女子大生の新井直美。憧れの永井先輩にホテルへ誘われるが、直美の伯父を名乗る男が飛び込んできて永井を追い出してしまう。男は辻山秀一という探偵で、彼女を出発まで守ることになっていた。そんな時、辻山の元妻・幸子が国崎組の跡取り殺害事件の容疑者になってしまう。直美は辻山に一緒に犯人を捜そうと言い出すが…。」(allcinema ONLIN)

薬師丸ひろ子主演の角川映画としては「セーラー服と機関銃」に続く3作目。公開時は原田知世版「時をかける少女」と2本立てだった。今でも名作と評価の高い「時を…」に比べると、ずいぶん影が薄い印象の本作だけど、個人的にはなかなかの佳作だと思っている。今回見なおしてそれを確信した。

一言でいえばアイドル映画。それもほぼ完璧な。何か教訓めいたものが得られるわけでもなく、深く考えさせられる要素もない。でも、見終わった後に「薬師丸ひろ子、かわいかったな~」という記憶と、ちょっと胸がキュンとなるような甘酸っぱい切なさが残る。それだけで十分な映画というのもあるのである。そして本作はまさしくそういう映画なのだ。

根岸吉太郎監督の演出と鎌田敏夫の脚本、どっちも職人的うまさを発揮している。本作も、素人探偵の女子大生がヤクザ絡みの殺人事件を解決する…という、現実ではほぼ「ありえない話」なんだけど、導入部分から事件に巻き込まれていく経緯の描き方が自然で、登場人物たちの映画的冒険にすっと入っていける。
たとえば、主人公・直美の探偵・辻山に対する感情が変化していく過程。最初は仕事とはいえ終日監視されるわけだから、当然のように拒絶反応だ。しかし、いくつかのエピソードを経て、「別に悪い人じゃなさそう…」から「ちょっとかわいいかも…」というほのかな好意へと変わっていく。ここがちゃんと段階を踏んで描かれているから、その後の直美のややとっぴな行動もそれほど不自然には感じられない。事件と恋愛、両方の要素がうまくシンクロしていくのだ。

もちろん、都合のわるい部分はしらっとカットしてしまう強引さもある。たとえば、幸子はどうして別れた元夫の家を知っていたのか…とか、引越しを装っての脱出作戦がそんなにうまくいくの?…とか、国崎組の親分のところまでよくすんなりたどり着けたな…とか。けっこうあるけど、そこは今度は演出のテンポの良さで押し切ってしまう。

そして事件が一件落着してからの、直美と探偵のクライマックス。ここでは思い切った長回しで薬師丸ひろ子と松田優作にたっぷり演技させる。その名シーンの後に主題歌がかかる。ここも好きな場面だ。大瀧詠一らしいとてもロマンチックなメロディーが効いている(アレンジは井上鑑だが)。

現代の視点で見ると、80年代初頭のファッションや社会風俗…なども印象的だ。70年代の角川映画に残っていた「戦後」の記憶は一掃され、すでにバブルの予兆のような浮かれた空気感が漂っている。改めて「1980年」という年は、本当の意味で戦後が終わった転換点だったのだということがよくわかるというか。同時に、主人公の設定である「お金持ちの女子大生」は、果たして現代においてリアリティーを持つのだろうか…という点も気になる。この映画に描かれた時代は、戦後からも切り離されているし、なおかつ現代にもつながっているようでいない…ような。

本作での松田優作は「33歳」という設定。これも今の感覚では「中年男」というには、少しだけ若いような気がする。今の中年は35歳くらいからでは…? どうなんだろうか。

(この作品もいい画像が少ないね。松田優作とのツーショットを探したんだけど…)
Tan

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2016年8月20日 (土)

GALETTe @西新宿ReNY

■本館に追加したライブレポート

8/17 GALETTe 西新宿 ReNY(ワンマン)

「GALETTe 3rd Anniversary One Man Live!! ~RISING SPECIAL~」。3周年ワンマン、充実してたね~。前年末のZepp ダイバーシティと比べても引き締まった、とても見応え、聴き応えのある内容。会場も満員にこそならなかったけど、いい盛り上がりでステージを支えてたんじゃないかな。要点だけと思ったものの、ついついちょい長めの感想になってます。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2016年8月11日 (木)

野性の証明 【角川映画祭】

■映画「野性の証明」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」4本目は、角川映画第三弾となる1978年公開の本作。薬師丸ひろ子のデビュー作であり、角川映画に高倉健が出演した唯一の作品。これもずいぶん昔にテレビで見ただけで、スクリーンでの鑑賞はこの日がお初でした。

ストーリーはこんな感じ。
「東北の山村で大量虐殺事件が発生。唯一生き残った少女・頼子はショックから記憶喪失となっていたが、当時山中でサバイバル訓練を行っていた自衛隊員・味沢に引き取られる。退役した味沢と頼子は地方都市で平穏な生活を行っていたが、予知能力とも言える頼子の持つ不思議な力が二人を巨大な陰謀へと巻き込んでいく…。」(allcinema ONLINE)

角川映画らしい娯楽大作。この当時はまだ年一作だった頃なので、オールスターキャストの配役といい、大がかりなロケーション撮影といい、とにかく豪華! いちおう自衛隊というか、軍隊一般の持つ非人間的な側面をチクリと刺す要素もあるんだけど、全体的にはそのへんも娯楽映画のスパイスとしていいバランスに収めている。

見どころはなんといっても主人公・味沢を演じる高倉健の存在感だろう。森村誠一の原作に沿ったストーリーなんだけど、まるで健さんに「あてがき」したかのようなキャラクター。全編に高倉健ワールドがさく裂している。よく考えると、自衛隊をヤクザの組に置き換えても通じるような話で、普段は抑え気味の寡黙な主人公が、ここぞというところでバッタバッタと敵をなぎ倒すなど、じつは健さん映画の王道ともいえるつくりであることにも気づく。いや、いいですわ~。

このタイプの健さん映画としては、個人的には『冬の華』がベストと思ってるのだが、この作品、「野性の証明」のわずか半年前の公開なのだ(1978年6月)。しかも、「冬の華」でも主人公は、かつて自分が殺した相手の娘である少女を密かに援助している。このへんも「野性の証明」とけっこうかぶる…というのは、改めて見ての新たな発見だったね。この当時の健さんの「イメージ」というのがたしかにあったのかもしれない。

そして、薬師丸ひろ子! デビュー作、しかもまだ中学生ということで演技面だけからいえば、おそらくもっとうまい子役はたくさんいるだろう。しかし、雰囲気はすでに圧倒的だ。これは後にスターになったことを知っているから…というのもおそらくはあるのだろうが、とにかく彼女の登場シーンから目を離すことができない。当時、すでに珍しくなっていた「映画から生まれたスター」薬師丸ひろ子のデビュー作を大スクリーンで見ることができたのは、この日の大きな収穫だった!

オールスターキャストだから脇役も見応えたっぷり。とりわけ存在感があったのは、地方都市のドンを演じている三國連太郎。うまいよね~。素晴らしいとしかいえない。松方弘樹、梅宮辰夫、舘ひろし、成田三樹夫…なども印象に残る。あと、自衛隊はけっこう闇のある組織として「悪役」に描かれているのだが、にもかかわらずかなり大がかりに撮影協力している。太っ腹ですな。

細かく見ていくと、山村の大量殺人と地方都市の陰謀には直接的な関係がない…とか、終盤急に薬師丸ひろ子のプロモーションビデオ風になる…とか、若干ツメの甘いところも散見されるのだが、まあそのへんも含めて角川映画という感じの作品。ただ、薬師丸ひろ子の亡骸を背中にしばりつけた健さんが、拳銃一丁で戦車の大群に向かっていくところでストップモーション…という超カッコいいラストシーンのあとは、エンドロールに映像はなくてよかったと思う。

(まさに男盛りという感じの健さん。薬師丸ひろ子はいい意味で変わらない)
Yasei

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2016年8月 8日 (月)

SHE IS SUMMER @新宿タワーレコード

■本館に追加したライブレポート

8/7 SHE IS SUMMER 新宿 タワーレコード(インストア)

8/3リリースのデビューCD「LOVELY FRUSTRATION E.P.」のプロモーションイベント。MICOさんらしい和やかで楽しい雰囲気のステージでしたね。バックトラックも、わざわざ「カラオケ」スタイルで仕込んできたり、お客さんを楽しませる工夫がいろいろ。また、ちゃんとしたステージも見たいな~。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2016年8月 7日 (日)

セーラー服と機関銃 【角川映画祭】

■映画「セーラー服と機関銃」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」3本目は薬師丸ひろ子主演でおなじみの本作。1981年公開。この作品も劇場のスクリーンで見たことがなかったのでこの機会に…ということで。

ストーリーはこんな感じ。
「父を事故で亡くし天涯孤独となった女子高生・星泉が、遠い血縁に当たる弱小貧乏暴力団『目高組』の四代目を継ぐことになり、4人の子分と共に対立するヤクザと戦う…。」(Wikipediaより)

大ヒット作であり、作品としての評価は別としても日本映画史に残る一本であるのは間違いない。実際に見たことがなくても、薬師丸ひろ子が機関銃をダダダダッ!と撃って、「カ・イ・カ・ン…」とつぶやくシーンをまったく知らないという人はいないだろう。

本作をちゃんと見て、まず感じたのは場面ごとの緊張感、画づくりのうまさ…といった映画的な快楽を感じさせる部分だった。このあたりは相米慎二監督の手腕が大きいのだろう。もちろん、主役である薬師丸ひろ子を魅力的に見せることにも成功している。

その一方で、ストーリー的には、「女子高生がヤクザの親分になる」というありえない話を、「それだったらありえるかも…」と観客に思わせる仕掛け、つまり映画的な大ボラ話を成立させるための細かいリアリティーの積み重ねという点で不満が残った気がする。

いくらなんでも歴史のあるヤクザの組がまったく素人の女の子を組長にするには、それなりの理由がほしい。本作では「先代が言い残した」ということですべてが片づけられているが、ちょっと弱いのではないだろうか。たとえば、上部組織が「先代の身内を跡目にしない限り組の存続は認めない」と条件をつけてくる。もちろん先代に親族がいないことを知った上での、目高組を潰すための言いがかりである。そこで目高組は遠縁の泉を探し出して、「名目だけでいいから組長になってほしい」と頼み込む…というような展開だ。
もちろん、泉の方にもむちゃな要望を飲むだけのしっかりした理由がほしい。映画では目高組が解散して殴り込みに行くのを止めるために、ある種の勢いで引き受けたように描かれている。が、これもやはり弱い気がする。家族を亡くして自暴自棄になっていたとしてもだ。父親が多額の借金を残していたとか、学校でいじめられていて、そのいじめっ子を見返したかったとか…とにかく普通では考えられない行動に走るだけの動機づけが欲しかった。

そんなわけで一場面、一場面のおもしろさには感心したのだけど、全体を通してはやはり「ありえない話」という感想で終わってしまうところが惜しい作品ではないだろうか。

配役では、柳沢慎吾や光石研が高校生役というところに時の流れを感じる。若手組員の酒井敏也などもそう。しかし、渡瀬恒彦だけは当時もう大人の役だったせいか、最近の「おみやさん」(テレビドラマシリーズ)などでも雰囲気がほとんど変わってない。けっこうすごいことではないだろうか。

(古い映画なのでネット上にもあまりいい画像が残ってないのよね…)
Se

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人間の証明 【角川映画祭】

■映画「人間の証明」 新宿 角川シネマ

「角川映画祭」2本目に選んだのは、1977年公開の角川映画第二弾「人間の証明」。「♪ママ~ドゥユゥリメンバ~」という主題歌と麦わら帽子がどこまでも落ちていくコマーシャルの記憶は鮮明なのだけど、やはり劇場では見てません。初めてのスクリーンでの鑑賞となりました。

ストーリーはこんな感じ。
「東京の高級ホテルのエレベーターで黒人男性が殺された。“ストーハ”という言葉と、西条八十の詩集を残して。捜査線上に見え隠れするファッションデザイナー・八杉恭子とその息子。黒人男性の過去を追って渡米する棟寄刑事。八杉と黒人男性の意外な関係、そしてアメリカの刑事と棟寄刑事の関係が明らかになる…。」(allcinema ONLINE)

クレジット上は岡田茉莉子主演だが、実質的には角川映画のスター、松田優作が初登場し主人公の刑事役を務めた作品。前作「犬神家の一族」に続いてオールスターキャストである。次々と登場する有名俳優、女優を見てるだけでも楽しい。若き日の竹下景子とかめっちゃカワイイ。

物語的には「砂の器」パターンということになるだろう。社会的地位のある人物が自らの過去が明らかになるのを恐れて殺人に及ぶ…というもので、クライマックスが華やかな舞台となるところなども共通している。

本作で犯人が知られたくなかった過去も「戦争」に関係したものだ。正確には戦後の混乱期、進駐軍に絡む出来事である。「犬神家の一族」の感想でも書いたが、1970年代というのはまだそういう戦争や戦後の記憶が一般の人々の中にかなり色濃く残っていたということだろう。「犬神家」は物語自体も終戦直後の昭和22年という設定だったが、映画公開とほぼ同じ1976年を舞台としている本作においても「戦争の痛み」はまだ消えていない。これは戦後70年以上たった21世紀の現在、改めて見直してみて、よりはっきりと気づかされた点だった。

物語的には突っ込みどころはある。複数の主要登場人物がたまたま過去に接点を持っていた…というのは、いくら世間は狭いとはいってもさすがに出来すぎだと思ってしまうし、授賞式のスピーチの場面も不自然さは相当なものだ。ファッションショーの場面が延々と続くのもテンポとしてどうなのかという気になる。
ただ、今回スクリーンでしっかり見て、見る者の情念に訴えかける社会派ミステリーとしては、とても骨格がしっかりしているなとも感じた。正直、鑑賞中ぐっとくる場面も何度もあった。ストーリーだけでなく俳優陣の演技の力もあるだろう。芸術作、問題作ではないが、娯楽大作であり、さらに娯楽だけにとどまらない余韻も残す。ヒットしたのもよく理解できる。

あと、思ったのはたった40年前の映画なのに、この間に日本社会の人権やコンプライアンス、ポリティカル・コレクトネスなどに関する「常識」が飛躍的に改善されているのだということがよくわかる。人間の情みたいなのは今も昔も変わらないのかもしれないが、社会というのは少しずつでも進歩するのだ。「昔はよかった」ではなく「昔はひどかった」が真相だ…とはよく言われることだが、たしかに映画はそのことがリアルに実感できる教材かもしれない。

冒頭には角川春樹事務所の鳳凰のマークがムービーで出る。前作の横溝正史に続いて本作でも原作者の森村誠一がカメオ出演。しかも、作家になる前にやっていたホテルマンの役。細かい話題づくりもきっちりやってるのがよくわかる。

(松田優作とハナ肇という組み合わせも意外だけどなかなかいい)
Nin

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2016年8月 4日 (木)

保坂朱乃、GALETTe、西恵利香、IsTaR @渋谷Glad

■本館に追加したライブレポート

8/1 保坂朱乃、GALETTe、西恵利香、IsTaR 渋谷 Glad

保坂朱乃さんの「引退ライブ(東京)」。同じ日の昼間に最後の単独ライブがあり、夜は縁のあるアーチストを招いてのイベント形式でのラストステージ。平日にもかかわらずお客さんは満員。かつて在籍したGALETTeのライブでは、最後にステージに登場して一緒に「じゃじゃ馬と呼ばないで」を歌うサプライズも! …でもまだ18歳。これで終わるなんて信じられないというファンも多いと思います。いつか、またどこかで。気長に待ちたいです。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2016年8月 3日 (水)

sympathy、ねこね こねこね、ユビキタス、コレサワ、エドガー・サリヴァン @渋谷チェルシーホテル

■本館に追加したライブレポート

7/31 sympathy、ねこね こねこね、ユビキタス、コレサワ、エドガー・サリヴァン 渋谷 チェルシーホテル

sympathyの自主企画イベント「わたしたちの夏休みツアー ~先生、宿題おわりません~」ファイナル。お目当ては東京ではそうそう見る機会のないシンパシー。ちなみに「先生、宿題おわりません」は曲の中に出てくるフレーズだけど、8/31開催だったらよりぴったりだった感じかもね。集客もほどよい感じでとてもいい雰囲気のイベントでした。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2016年8月 2日 (火)

Negicco @渋谷NHKホール

■本館に追加したライブレポート

7/30 Negicco 渋谷 NHKホール(ワンマン)

「Negicco 13th Anniversary 『Road of Negiiiiii ~TADAIMA~ 2016 Summer at NHKホール』 supported by サトウ食品」。Negiccoちゃんたちにとっては思い出深い会場での気合いの入ったライブ。同時に最新アルバム「ティー・フォー・スリー」のレコ発ワンマンとしても充実した聴き応えのある内容でした。細かく見ていくと本当にこのコンサートに込められた意味とかだけで超ロングレビューが書けてしまいそう。今回はなるべくポイントを絞って感想としてみましたが、それでもそこそこの長さになってます。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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