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2017年1月

2017年1月24日 (火)

沈黙 -サイレンス-

■映画「沈黙 -サイレンス-」 日比谷 TOHOシネマズ スカラ座

海外にも読者の多い遠藤周作の原作小説を、マーティン・スコセッシ監督が完全映画化した話題作。以前「隠れキリシタン」関係の本を読んだことなどもあり、ぜひ見たいと思っていた作品でした。

ストーリーはこんな感じ。
「江戸幕府によるキリシタン弾圧が激しさを増していた17世紀。長崎で宣教師のフェレイラ(リーアム・ニーソン)が捕まって棄教したとの知らせを受けた彼の弟子ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライヴァー)は、キチジロー(窪塚洋介)の協力で日本に潜入する。彼らは、隠れキリシタンと呼ばれる人々と出会い…。」(シネマトゥデイ)

原作は未読ながら、「あらすじ」のかなり詳しいものを事前に読んでいた。本作のストーリーは、その原作の物語にほぼ忠実。とても誠実につくられた文芸作品という印象を受けた。江戸初期の日本の風景は、主に台湾でロケされたものだろうか(エンドロールに台湾関係のクレジットが出てくる)。時代考証や美術なども日本人から見てまったく違和感のないもので、ハリウッド映画などにありがちな「中国と混同してるんじゃないの?」みたいなところも皆無。日本を舞台とした映画としては最上級の一本といっていいだろう。

とても丁寧に作っているため上映時間は「2時間42分」とかなりの長尺。無駄な場面があるわけではないから、ダラダラ長いという感じはないのだが、ひょいと気軽に見られる作品でないのも確かだろう。もっとも、テーマ自体も重厚なものなので、やはりある程度は腰を据えて見て、見終わった後にもじっくり考える時間を持ちたい作品だともいえる。「おもしろかった~」で済ませてしまってはもったいない映画だと思った。

原作は、キリスト教徒であった遠藤周作が日本人である自らとキリスト教の関係を考え抜く中で生まれた小説である。映画でもそこが真正面から捉えられている。日本というキリスト教がまったく根づいてない(むしろ激しく弾圧されている)環境で信仰を続けることの意味が鋭く問われる。しかし、ここはキリスト教徒ではない自分にはぼんやりとしかわからなかった…というのが正直な感想だと言わなくてはならない。あくまでも想像することしかできないという感じだ。

逆に、殺されても信仰を守ろうとした日本人信徒たちを支えていたものは何なのだろうということが気になった。普通に考えれば、やはり当時の民衆の生活が苦しかったということだろう。信仰が唯一の救いであり、現世で生きるよりも、死んで天国に行く方が魅力的と思えるような環境だったということだ。
ただ、これは幕府の側からはとても危険な思想に見えただろうということも理解できる。そう遠い昔ではない戦国時代には一向衆などの宗教勢力が大名たちを苦しめている。信徒たちが真摯であればあるほど幕府としては脅威を感じ、弾圧を強化せずにいられないということになる。

この構図は現代の世界にも通じるものがあるのではないだろうか。格差の最底辺に置かれた地域ほど過激な宗教思想がはびこり脅威になっている。生きることよりも自爆テロで死んで天国に行くことが魅力に思えるような状況があるから、国際社会が押さえつけようとするほど信者は団結してしまう。現代の主な日本人はその対立構造を、この映画でいえば幕府側に立って見ていることになる。

では、ここで守らなくてはならないものが宗教ではなく、多くの現代人にとっての「真理」といえる自由、平等、民主主義…などであったとしたらどうだろうか。どこかの独裁国家に流れ着いて、そこでは人権が無視され、思想や表現の自由もないとしたら…。強い人は命をかけて自分の信念を貫こうとするだろう。しかし、自分も含めて弱い人は、表面的には従っているような態度をとりながら、心の中までは渡さないという姿勢をとるしかないのではないだろうか。

自由も平等も民主主義も否定しながら、心の中でだけそれを守り続けるとしたら、それは本作が描く棄教した宣教師たちや弱者の代表のようなキチジローとまったく同じといっていい。今後、そういう普遍的と思われている価値が否定される事態が絶対に訪れないとはいえない。戦時中の日本などはまさにそうだったし、現にそういう国も多数ある。本作の描くテーマは、現代日本の私たちにとってはそう置き換えた方が理解しやすいかもしれない。

さて、映画そのものの印象についても少々。PG12指定になっているのは拷問や殉教のシーンがリアルに描かれているからだろう。非常に迫力がある。主人公と一緒に日本にやってくるガルペ神父は、スターウォーズのカイロ・レンにダブってしまった。スターウォーズを見すぎの人は要注意だ。

(窪塚洋介が演じるキチジローは非常に重要な登場人物)
Sil

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2017年1月21日 (土)

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

■映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 」 日比谷 TOHOシネマズシャンテ

何か見たいな…ということで。事前のプロモーションとかもそんなに多くはなかったはずで、予備知識はネットで予告編を見たくらいでしたね。

ストーリーはこんな感じ。
「イギリス軍諜報機関のキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、ケニア・ナイロビ上空の偵察用ドローンからの情報をもとに、戦地から遠いロンドンでアメリカとの合同軍事作戦を指揮している。大規模な自爆テロ計画の情報をキャッチした彼女は、アメリカの軍事基地にいるドローンパイロットのスティーブ(アーロン・ポール)に攻撃を命じるも、殺傷圏内に一人の少女がいることが判明する…。」(シネマトゥデイ)

ずばり「現代の戦争」を描いた作品。「戦争」と言われて日本人がイメージするのは、おそらく第二次世界大戦のような「国と国との総力戦」だろう。ニュースでは各地での「対テロ戦争」やシリアのような「内戦」が頻繁に報じられているにもかかわらず、われわれの戦争のイメージはなぜか第二次世界大戦で止まっている。しかし、それでは今後、戦争や平和の問題を考えていくうえで不十分ではないだろうか。この映画を見て改めてそんなことを痛感させられた。

といっても決して難しい映画ではない。むしろ、ある対テロ作戦を題材にした飛び切りのサスペンス映画であり、冒頭からラストまで一気呵成のエンターテインメント作品になっている。大きなテーマを扱いながら娯楽性をちゃんと確保し、なおかつ娯楽だけに終わらせてもいない。制作者の素晴らしい手さばきだと思った。

物語は一つの特殊作戦のはじまりから終わりまで、わずか数時間の出来事に絞り込んでいる。この作劇がまずうまい。監視していた大物テロリストが自爆テロの準備中であることがわかる。早く阻止しないと大勢の死傷者を出してしまう。そこでドローンを使って攻撃しようとするのだが、テロリストのアジトのすぐ前では一人の少女がパンを売る屋台を出していた。このまま攻撃したら罪のない少女を巻き込んでしまう。しかし、時間が経てば自爆テロが決行されてしまう…。

「大勢の命を救うために関係のない少女を犠牲にしていいのか」…この究極の判断を限られた時間で下さないといけない。さまざまな意見がぶつかり、最終的な決断を迫られた政治家たちはみんな逃げようとする。そうこうするうちにも時間は刻々と過ぎていく。まさに手に汗をにぎるすさまじいサスペンスがこの映画の大きな見どころとなっている。

もう一つのポイントはこの作戦が、ドローンを使ってほぼ全部地球の反対側といっていい遠距離から行われていることだろう。ここにまさに「現代の戦争」の特徴がある。狙われている方は自分たちが監視されていることにも気づかないうちにピンポイントでミサイルを撃ち込まれる。が、狙っている側がいるのは数千キロ離れた絶対的な安全圏だ。ものすごい非対称性である。

こうしたドローン攻撃については、よく「ゲーム的な感覚で殺人を行うことになるのではないか」という指摘がされている。しかし、この映画を見ると少し印象が変わった。攻撃側はまさに(タイトルでもある)「神の視点」から地上を見て、生殺与奪の力を握ることになる。そこにあるのは「ゲーム感覚」ではなく、「ひょっとして自分は神の領域を侵しているのではないか」という不安、怖れではないのだろうか。本作でも作戦を終えたパイロットたちが心身ともに疲弊している様子が描かれていた。身体が安全圏にあるからといって精神まで安全であるとは言い切れない。安全な戦争などないのだということがよくわかる。

また、ドローンを使った攻撃もそれだけで完結できるものではなく、地上からの情報が非常に重要だということも描かれている。本作でも、小鳥や虫のようなカメラロボット(これらはさすがに架空のガジェットだろう)を操る現地エージェントが登場する。彼らの任務はきわめて危険で、いつ見つかるかというサスペンスも物語のもう一つの柱になっている。ここでも違う意味で、100%安全な作戦、戦争はありえないのだと思わされる。

その他にも、テロリストと同じ地域に住んでいてもほとんどはごくまともな住民だということ、米軍が学資返済を利用して経済的徴兵を行っていること、報告書の改ざんがありえること(冒頭に「戦争の最初の犠牲者は『真実』である」…という箴言が出てくる)…など、現代の戦争を取り巻く複雑な問題が数多く散りばめられている。

非常に盛りだくさんな情報映画でもあるのだが、脚本には無理がなく物語は一直線に進んでいく。また、登場人物の個性の描き分けもちゃんとできている。こういう「時事問題映画」は、「実話もの映画」と並んでアメリカ映画のとても強いところだと思う。真面目なドキュメンタリーとかではなく、問題意識を残しながらエンターテインメトに昇華した作品を日本映画などでも見たいのだが…。見終わってそんなことも考えた。

(人間ではなくAIが作戦を実行するようになったら…また別の問題が発生しそう)
Eye

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2017年1月16日 (月)

井上ほの花 @新宿HMV record shop

■本館に追加したライブレポート

1/15 井上ほの花 新宿 HMV record shop 新宿ALTA(インストア)

12/28リリースの1stミニアルバム「ファースト・フライト」のプロモーションイベント。アルバムは年末の発売と同時に入手していて、とても良い内容だったので、この日もけっこう楽しみにしてました。ちなみに、「HMV record shop 新宿ALTA」でのイベントに行ったのはこの日が初。いちばん奥のCD売り場の什器を片づけてイベントスペ-スにしていて、そこがほぼお客さんで埋まってた感じだったかな。盛況でしたね。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2017年1月15日 (日)

人魚姫

■映画「人魚姫」 新宿 シネマート

チャウ・シンチー監督の新作。前作の『西遊記 ~はじまりのはじまり~』がおもしろかったのと、新聞の映画評が最高点をつけてたので。平日の昼間からお客さんけっこう入ってましたね。

ストーリーはこんな感じ。
「青年実業家のリウ(ダン・チャオ)は、リゾート開発のため香港郊外の美しい青羅湾を買収する。しかし、そこには絶滅の危機にひんする人魚族が住んでいた。彼らは、美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を人間の女性に変装させ、刺客としてリウのもとに送り込む。ところがリウとシャンシャンは惹かれ合い、やがて人魚族の存在が人間に知られてしまう…。」(シネマトゥデイ)

時代劇だった『西遊記』に対して本作は現代劇。ファンタジック・コメディーとしての「こなれ方」からみると前作に軍配を上げたくなる感じかな。でも、今回も十分におもしろい。特に後半は一気呵成。では、何がそんなにおもしろいのか。言葉ではなかなか説明しにくい。コメディーなのでお笑いをいちいち解説するのも野暮だし…。とにかく見てほしい!としか言えないのである。

ふと思ったのだが、これと同じ設定の作品を日本でつくったとしても、成功するイメージがなかなかわかない。やはり、チャウ・シンチー監督ならではの演出の勢い、グルーヴ、バランス感覚のようなものが非常に大きいと思う。また、コメディータッチの大げさな演技も、中国語だとうまくハマるというのもある。日本語はもちろん英語のノリとも違う。まさに中華圏ならではの映画といえそうだ。

コメディー的な側面が注目されがちだが、同時に物語の骨格となる筋立て自体も非常によく出来ている。というか、ストーリーそのものは昔からよくある「女刺客がターゲットに恋してしまう」「ターゲットも女刺客との触れ合いを通じて自らの犯していた罪に気づく」というもので、けっこう鉄板な図式。だから安心して見られる。欲をいえば、この鉄板構造そのものをからかうような展開があればもっと良かったのかもしれないが、今回はそこまでは踏み込んでいない。むしろ、環境問題をテーマにすることで、現在中国で進んでいる拝金主義を背景とする環境破壊を批判しているということなのだろう。

キャストでは、なんといってもヒロインに抜擢された19歳の新人女優、リン・ユンの魅力が爆発! 必ずしも正統派美人というわけではないのだが、なんともいえない愛嬌があってかわいい。そのかわいい彼女を情け容赦なくボコボコにするチャウ・シンチー監督。お涙頂戴ではないのだが、「ひどいわ~」と笑っているうちに、いつしかシャンシャン(リン・ユンの役名)に感情移入してしまう。コミカルな演技が出来て、雰囲気もとても親しみやすいので青春もの映画などでもハマるのではないだろうか。

脇ではタコ兄のショウ・ルオがいい味。彼のシーンは基本コメディーなのだが、ほぼ100%確実に笑わせる。若き富豪リウ役のダン・チャオは、シャンシャンと親しくなる遊園地でのミュージカルシーンなどが印象に残る。

(リン・ユンさんは「ジェリー・リン」と名乗ることもあるみたい)
Mar2

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2017年1月12日 (木)

本館にCDレビュー追加(1/12)

■追加したCDレビュー

春奈るな 「Windia」
婦人倶楽部 「フジンカラー」
初音 「恋ノート1」
April 「Snowman」
April 「Spring」

今回は2016年10月頃に買った盤。たまたまですが、春奈るなさん以外はその時点で発売からある程度時間が経った旧譜がそろいました。特に2枚まとめて感想を書いたエイプリルは、10月に来日コンサートがあり、直前に旧譜をまとめて買ったのでこんな感じに。次回は11~12月頃に買った盤をレビューします!

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2017年1月10日 (火)

本館にCDレビュー追加(1/10)

■追加したCDレビュー

二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band 「GOTTA-NI」
雨宮天 「Various BLUE」
brinq 「Magical brinq Tour」
April 「Dreaming」
April 「Boing Boing」

2017年初のCDレビューは、じつは2016年9月頃に買った盤。しかも、すべて初めてのCDレビューとなるアーチストだったりします。さらにいうなら、K-POPのガールグループであるエイプリル以外はライブも未見なので、ライブレポも書いたことないという…。けっこう珍しいパターンかもしれません。ちなみにAprilはデビューした2015年の旧譜。次回更新でも続く作品を取り上げる予定。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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2017年1月 8日 (日)

POLTA @渋谷O-nest

■本館に追加したライブレポート

1/6 POLTA 渋谷 O-nest(ワンマン)

2017年一発目のライブ現場は、「POLTAワンマンライブ IS CONNECTED NEW YEAR PARTY」。POLTA初のワンマン!…ということで行って参りました。たっぷり聴けてよかったですね。入場時にプレゼントとして大入り袋入りの「おみくじ」が配られてて、私に当たったのは「中吉」。でも、この日の内容は「大吉」といっていいとても充実したワンマンだったんじゃないかな~。

○より詳しい感想は「ガールズ・ドット・ミュージック」でご覧いただけます。

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