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2017年4月 3日 (月)

SING/シング

■映画「SING/シング」 渋谷 TOHOシネマズ

人気も高く評判も上々のアニメ映画。ちょうど春休みの期間中でもあり、小学生くらいの子供を連れた親子のお客さんが多かったかな。

ストーリーはこんな感じ。
「劇場を運営するコアラのバスター・ムーンは、かつては活気のあった劇場に輝きを取り戻すべく、世界最高の歌唱コンテストをプロデュースしようと考える。感傷的に歌うハツカネズミや、内気なゾウ、25匹も子供がいるブタ、パンクロッカーのヤマアラシらが会場に集結し…。」(シネマトゥデイ)

アニメ映画ならではの「勢い」で全編見せ切ってしまう。文句なしに楽しい作品だろう。借金で首が回らなくなっている主人公は、一発逆転を狙って「素人のど自慢」のショーを企画する。この「お金に困ったらショーで稼ごう」というのは、ハリウッドのプログラムピクチャーの時代からの正統的なお約束パターン。『ザッツ・エンターテインメント』の中でもMGMミュージカル映画の典型的ストーリーとして紹介されていたはず。そのクラシックな軸に、のど自慢参加者のそれぞれが抱える、こちらは非常に現代的な悩みや事情が絡む。間違いのない鉄板の縦糸に新しい横糸を絡めた構成といえる。しっかりした物語で最後まで一気に楽しめたね~。

でも、あとで冷静に振り返るとけっこうご都合主義な展開や調子のよすぎる流れも随所に見られる。そもそも「素人のど自慢」で潰れかかった(実際に物理的にも一度潰れてしまう)劇場を復興できるのなら、もっと早くからやっとけという話だし、金目当てに集まった素人にそんなに才能が埋もれていたというのも調子よすぎる。他にも実写でやったら「リアリティーがない」と言われそうなところはいくらでもある。

しかし、それが許されるのが「アニメ映画」であり、さらには登場キャラすべてが「動物」だというところだろう。そういう作品の特性を思い切り生かして、実写では不可能な物語の展開やテンポを生み出している。だから見ている間は、ご都合主義でも何でもほとんど気にならずに、「物語の勢い」で最後まで見せられてしまう。そこには「理屈よりもグルーヴ」に身を任せることの心地よさがあり、それはある意味で「音楽の快感」にも通底するものだといえる。そう、この映画は物語そのものが音楽になっているいえるのではないだろうか。

さらに言うなら、主人公のバスター・ムーンは舞台への情熱こそあるものの、コンプライアンス面では最低の経営者である。また、ネズミのマイクも音楽の才能はたしかにあるが、やっていることはゴロツキと変わりがない。しかも、そいつらは最後まで改心することもなく、元のまま。子供が多く見に来ている映画なのに、そこらへんの教育的配慮は一切なしだ。
しかし、音楽にも世の中にも「いろいろある」ということを教えることこそ最大の教育的配慮なのではないか。文科省推薦じゃない音楽、放送禁止の音楽にも素晴らしいものはいくらでもある。あるいは世の中にはろくでもないやつがいるが、そのろくでもないやつにもひょっとしたら良いところがあるかもしれない。もちろんその逆もありだ。登場キャラが抱える悩みや迷いが現代的であり、同時に子供よりもむしろ大人の方が共感してしまうような設定になってたりすることも含めて、非常に懐の深い物語になっている。まさに大人が見ても子供が見ても手ごたえを感じられる作品だといえる。

今回見たのは「日本語吹き替え版」。この数年、海外アニメは吹き替え版で見ることも多く、決して字幕版原理主義者ではない。ただ、「歌」が主役ともいえる本作のような作品は、やっぱりオリジナルで見た方が(聴いた方が)本来の味わいを感じられるのではないか…という気もしていた。ただ、事前に吹き替え版もオリジナルの字幕版に負けないくらい素晴らしい…と聞いていたので、そこにもちょっと興味があった。結論からいえばとても良かったね。
驚かされるのは、それぞれの分野でけっこう有名な人たちが声を当てているのに、映画を見ている間、「あ、この声は誰それだな…」とほとんど気づかせないこと。もちろん、MISIAなどは歌声を聴くとわかってしまうのだけど、MISIAが歌ってるな…とはならない。あくまでもゾウのミーナの歌として聴いてしまう。他の配役もまったく同じ。個性的な声が役に完全にシンクロしている。エンドロールのクレジットを見て、改めて感心してしまった。この吹き替え技術(キャスティングやディレクションも含めて)、世界でもトップクラスなのではないだろうか。

(比較という意味でもオリジナル英語版も見て見たくなるよね~)
Sing


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