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2017年5月17日 (水)

カフェ・ソサエティ

■映画「カフェ・ソサエティ」 日比谷 みゆき座

劇場で見た予告編はいまいちだったのだが、新聞の映画評がわりと良かったで。

ストーリーはこんな感じ。
「1930年代。ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、刺激にあふれた人生を送りたいと願い、生まれ育ったニューヨークからハリウッドに向かう。映画業界のエージェントとして成功している叔父フィルのもとで働くボビーだったが、やがて叔父の秘書を務める美しいヴォニー(クリステン・スチュワート)のとりこになる。彼女との距離が縮まるにつれ結婚まで考えるようになるボビー。しかし、彼女にはひそかに付き合っている男性がいた…。」(シネマトゥデイ)

脚本・監督はウディ・アレン。80代になった今もバリバリの現役。というわけで作品は多いが、考えてみるとあまりちゃんと見たことがない監督でもあった。テレビ放映されたようなのは別として、劇場できっちり見たことはないかも…。

そんなわけで「ウディ・アレン初心者」の感想としては、非常にありきたりだが、アメリカ文学の短編小説を読んだような気分になる映画…そんな表現がぴったりだと思った。

上映時間は96分。もともとそう長い映画ではない。語りがけっこう多用されていて、ストーリーをどんどん進めていく。普通なら「語りの多用」「説明ゼリフ」などは素人くさい作劇法の代表という感じで、その段階で「うーん」と感じてしまうところだろう。しかし、本作ではそう思わせないところが、やはり百戦錬磨の監督の手腕なんだろうね。全編に流れる軽快なジャズ音楽とともに必要なエピソードをサクサクと積み上げていく。ギャングが人を殺す場面でさえ、郵便配達が郵便受けに封筒を投げ込むような感覚でテンポよく描かれる。その結果として生まれているのが、「アメリカ文学の短編小説」のようなすっきりとして乾いた感じ、それでいてとても小粋な印象なのだろう。

物語はハリウッドを舞台とする前半とニューヨークでの後半に大きく分かれる。ハリウッドでは奇妙な三角関係を伴った恋愛が描かれる。ナイーブな主人公ボビーの目線から見ていると、なかなか切ない展開となる。彼は心に痛手を負って故郷ニューヨークに戻る。ナイトクラブの仕事に就いたボビーはいっぱしの男に成長する。結婚もして子供も生まれた。自信に満ちた人生だ。そんな時、ハリウッド時代の恋人と再会する。ボビーはまだ彼女のことが忘れられないでいる自分に気づく…。

サクサクとしたタッチで進んできた物語が急に「人生のホロ苦さ」を感じさせるものになる。演出のテンポも音楽の使い方もそれまでと何も変えてないのに。この映画で描かれている事件は、多少状況設定を変えれば、おそらく誰の身の上にも起こりうることだろう。物語の結末に大きな展開はなく、ただじわりと広がる余韻だけを残して映画は終わる。これこそ大河小説ではない、都会的な短編小説の味わいであろう。比較的短い上映時間もそんな題材にぴったり。「小品ならではの良さ」が出た作品だと思った。

ストーリー以外の部分も魅力的だったね。出演者はみんなはまり役。主人公の恋人役と結婚相手役、二人の女優さんもそれぞれにチャーミングでよかった。また、1930年代のファッションや音楽、風景や街並みの描写も素晴らしかった。やはり、映画はこういう「今ではもう見ることのできない時代」を見せてくれるエンターテインメントでもある。このへんの時代が好きな人なら文句なしに楽しめるだろう。

一方、映画本編とは関係ない話ではあるのだが、日本版の予告編はいろんな意味でこの映画の良さを伝えきれてなかった気がした。おそらく予告編だけだったらこの作品を見ることはなかっただろうし、見始めてからも「なんか予告編でやってた話と違うな…」という感覚があったりして、予習に役立つどころか逆にノイズ化していたような気も…。

(夜明けのセントラルパークでワインを…というお洒落なシーン!)
Cafe


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