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2009年5月15日 (金)

スラムドッグ$ミリオネア

■映画「スラムドッグ$ミリオネア」 錦糸町 TOHOシネマズ

アカデミー賞作品賞などを獲得した話題の映画。舞台がインドで、題材が「クイズ・ミリオネア」…というあたりがおもしろそうかな、と思って見てきました。

ストーリーはこんな感じ。
「テレビ番組『クイズ$ミリオネア』に出演し、賞金を獲得したジャマール(デヴ・パテル)だったが、ムンバイのスラム街で育った少年が正解を知るはずがないと不正を疑われ逮捕される。ジャマールになぜこれほどの知識があり、この番組に出演するに至ったのか。警察の尋問によって、真実が明らかになっていく…。」(シネマトゥデイ)

たしかに評判通りのおもしろさ! いろんな意味でうまい映画だな~と思わせられた。緊迫したクイズのシーン、警察での取り調べシーン、そして主人公の回想シーン…。この3つの場面がテンポ良く展開し、最初から最後まで一気に見せられてしまう。インドの土地と人々が生み出す熱気、混沌、スピードをふんだんに感じさせ、同時に映画作品としてもものすごく洗練されているのだ。
このストーリー、冷静に考えてみれば、「主人公がたまたま答を知っている問題ばかりが出た」という究極に都合のよい話、できすぎた話である。ところが、ジャマールの回想を追って物語の世界に入り込んでしまうと、それがとてもご都合主義とは思えない魔術的なリアリティーを伴って感じられるようになってくる。脚本が上手いともいえるし、舞台が何でもありのインドだから…という効果もかなり強く作用しているともいえる。映画の後半になると、たぶん結末はハッピーエンドだろうなとある程度予想できていても、むしろクイズの結果以外の部分での主人公たちの運命が気になってスクリーンから目が離せなくなるのである。
見終わって感じたのは、当初のイメージだった「無学な若者がクイズ番組で億万長者になる話」がこの映画の芯ではない…ということだった。このストーリーの最も深い部分を支えていたのは、実は「対照的な運命を辿る兄と弟の物語」ではないのだろうか。
日本にも海彦山彦の話があるように、性格の違う兄弟を題材とする話は世界各地にある。神話やサーガに登場する兄弟の物語は私たちにも親しみ深く、いわばエンターテインメントの基本ともいえるものだ。そう思うと、本作が舞台にしたインドという土地は、神話的、寓話的な物語がこれほどハマる場所もないような気がしてくる。登場人物たちの数奇な運命、とりわけ明暗がくっきり分かれた兄弟の人生…。シンプルで力強い物語の構造が底辺にあるからこそ、この映画はテレビのクイズショーというある意味で軽い題材を扱っているにもかかわらず、奇をてらわない正攻法の作品になっているような気がするのである。

(土地柄で問題を難しいと感じる基準も違うのでしょうが、大金がかかった最後の問題、日本なら4、5問目に出る難易度じゃないですかね?)
Sl01

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